簡単だけど難しいこと

 パソコンのパーツがAmazonから届いた。1TBのSSDで、7000円くらいだった。安い。マザーボードだかケースだかに付属してきたSATAケーブルが余っていたはずなので、PC周りの道具が適当に放り込んである箱を開けてみると、やっぱり一本出てきた。PCケースのアクリルパネルを外してSATA端子にケーブルを差し、もう片端をSSDに差した。それから電源ケーブルの束からSATA接続用の電源を引っ張り出して差した。それだけでハード的な接続は完了する。とても簡単だ。マウンタが増設したケースファンに干渉して取り付けるのが面倒だったので本体の壁にガムテープでマウントした。ぼくはSSDのガムテマウントがとても好きだ。雑然としたサイバーパンクっぽいし、発熱がとても少なく軽量小型のSSDならガムテマウントで必要十分なところがなんとなく玄人っぽくていい感じだからだ。あとはソフト的な接続だけれどそれはBIOSがやってくれるのであとは適当にフォーマットするとSSDはいつでも使える状態になる。これらの作業はとても簡単で小学生でも出来るけれど、PCのことがわからない人には難しく感じるのだろうなあとふと思う。これは料理に例えると、たぶん冷蔵庫の中の余り物でカレーを作るくらいの難易度なんだけど、ぼくは料理が全然出来ないので、余り物で料理を作れる人を見るとなんか難しそうだな、何を考えて作ってるんだろうなあと思うのと同じだと思う。適当に食べられるものができればいいや、くらいの感覚でPCをいじっている。そういうのが一番楽しい。
 
 青梅は御岳山に行ってきた。高尾山ほどではないにせよ人が多い。山にたくさんの人がいるとがっかりしてしまう。田舎の山には登山客などほとんどいないので、それが当たり前の感覚としてある。しかし東京近郊の山はどこも登山客というものがおり、登山がひとつの娯楽として広く認知されている、ということを思い知らされる。登山というものが一般的に確立されていて、登山客は登山というものの像を、その共通認識を、しっかりと理解しているようだ、という感じがする。というのも、やはりものすごくしっかりした格好をした人びとが大半だからだ。彼らはきっとネットやアウトドア雑誌できちんとギアを調べて、誰かが提示した最適解みたいな、これを準備しておけば困らない、という道具を持って登山をする。そうするのが普通だ、という感じでいるのではないかと思うし、それが東京近郊の登山の普通なのだろうと思う。もちろんそれでよい。間違っていない。でもやっぱりぼくはちょっと物足りない。攻略実況配信を見ながらゲームしてるみたいだ。なんというか、ぼくはアウトドアで困りたいと思っているんだな、と最近わかってきた。山に期待しているものが全然違う方向にあるのだと思う。ぼくが山に期待しているのは人間界以外の何かであって、だから出来るだけ人間的なものがない方がうれしい。道もめちゃくちゃでいいし、ケーブルカーやリフトやお土産屋さんは特にいらないと思っている。達成感も別に欲しくないし、安全でなくてもいいと思っている。ぼくが知ってる田舎の山がそうだったからだ。山はすこしも優しくない。人間のためにあるわけではないから、ほんのすこし間違うだけで人間は大けがをする。そういう世界がいいなと思いながらケーブルカーに乗ってリフトを使って8合目まで行き、眺めのいい渋い食堂でとろろそばを食べた。おいしかった。階段をのぼって神社に行きお参りをして帰ってきた。そもそも登山道がどこにあるかよくわからなかった。東京の登山は難しい。
 
 今の会社にどれくらいいるのか計算してみた。時間にして約9800時間だった。人間というものは一体なんだろうと思った。ぼくは思ったよりも社会に貢献しているような気持ちになった。それと同時に、意に染まぬ契約をさせられていたような気持ちにもなる。わずかばかりの賃金のために何か大切なものを少しずつ失い続けているんじゃないか、というような漠然とした不安のような気持ち。それは結局何をしていても生まれる不安なのだろうなあと感じる。そしてその不安には意味が無くて、不安を感じたからといって何かが解決するわけでも何かが上向くわけでもない。だから感じる必要がないし、感じたからといって真に受ける必要もなかった。感じるだけ無駄だと思ったので、楽しいことを考えている。
 
 意味のない言葉をつぶやくのはカラフルなビー玉をなめるのに似ている。
 
 答えを知らなければ解けない問題というのがあって、答えを知らないのにじっくり考えてしまっている自分がいた。それはつまり暗記問題であって、答えを知っていることを前提にした問題であり、思考力とか論理的解答というものは求められていないのに、考えれば解けるかもしれないと思ってしまっていることがある。暗記問題に取り掛かる時にはまず答えをすぐに見て、それを覚えなくてはならない。人間と話していてもこういうことがあるな、と思い具体例を思い出そうとしてみているんだけれど、さっきから答えが全然でない。