陶酔

 友人と目黒でステーキを食べた。うまいサーロインだった。ブッフェでプロシュートやおいしいソーセージも食べ放題だし、浅い味つけのマリネも種類が豊富だった。ビールも飲んだ。それで2000円だった。あまりに安すぎるのでまた行きたい。

 そのあと友人と中目黒の陶芸教室でろくろ体験をした。ぼくたちは一杯ずつ酒を飲んで、それでろくろを回して何かを作ろうという大人で、陶芸ははじめてだったので新しい感触がたくさん手に入った。ぼくは湯呑みを四つ作ったが、友人は平皿をメインに作った。ろくろから湯呑みも皿もできるということさえぼくは知らなかった。先生は紫色のサングラスをかけた怪しいけれど優しい細身の男性であれこれ教えて下さった。三個目の湯呑みを作っている時、力が入り過ぎて泥が裂けてめちゃくちゃになってしまった。やり直しになるのかなと思ったら、友人がそれいいじゃんと言って、裂けてべこべこになったクラッシュ湯呑みを見ているうちにぼくも気に入ってきたので、オブジェとして作品にすることにした。先生は、直せるということも強調しつつ、それがいいならそのままにしましょうと言ってくれた。ぼくは整った形も好きだけど、混沌のまま整理されなかった形も好きだと思った。手の中で薄くなりすぎた泥がろくろの力に巻き込まれて裂けていく不吉な感触を忘れたくないなと思った。友人の平皿は売り物のように滑らかで美しくフラットで、人間が出るのかもしれないなあと思った。人間の器が。六週間後に焼き上がるらしいので楽しみだ。友人は子供を連れてまた来て、色付けの工程もやってみるそうだ。とてもよいと思う。

 大阪の友人の勧めでRRRという映画を見た。インドの大作アクション映画なのだけど、非常に素晴らしかった。エンタメのすべてが詰まりすぎている。上映時間は3時間もある。ポンポさんに怒られるくらい長いけど、それにしても飽きずにずっと面白い。音楽、演出、演技、歌、ダンス、アクション、シナリオ、舞台、どれもとっても金のかかった一級品なのに、やってることはあまりにもストレートなアホらしさというか、アホなのにかっこいいし、感動するし泣けるし、熱いのに意味不明だったり、面白い要素が多すぎて言葉にできない。劇場では笑い声が絶えなかったけれど、泣いている人もいただろうなと思う。泣き笑いになる。エンドロールが終わると自然と拍手も起きた。とてつもない。あらゆるケレン味とストレートな価値観を胸を張って保ち続ける芯の強い傑作。たぶん、誰かの人生を変えるような作品だろうと思う。

 今日はとてもよい一日だった。