屋根裏みたいな部屋

今週のお題「わたしの部屋」

 はじめて部屋を訪れた姉は「屋根裏みてぇな部屋だな」と言った。
 確かに屋根裏みたいな部屋だった。建物の構造上、壁の一部が斜めになっているし、それほど広くもない空間に生活の道具が詰まっている。その道具は使い込まれていてかすれ、使われないものには薄く埃が積もっている。屋根裏みたいな部屋だ。僕はそこで暮らしている。おおむね幸福に。

 部屋のチャームポイントについて考えてみると、それはおそらく個性のようなものが凝縮されているところなのだろうな、と僕は思う。それはどんな部屋にせよ、そこで暮らしている人間がいるのなら、好むと好まざるとにかかわらず表出するものなのだろうから、「僕の部屋」のチャームポイントではないのだろうけれど、自分自身が気づいていないだけで、僕の部屋には僕の個性があるかのかもしれない。部屋を見渡してみて、そういうものが無いか探してみる。まるで他人の部屋をはじめて訪れた人間の目で。

 

 

 

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青い照明

 部屋の照明が青い。青色が好きなので、カーテンは青いし、バスタオルも青かった。でもある時ふと「部屋の照明も青にしよう」と思い立ち、電球を青色に変えてしまった。部屋は寒々とした青色になった。あらゆるものが色つきの薄い膜を被っているみたいで面白い。どことなく幽霊が出そうな雰囲気もある。青色の照明の中で、ホラー映画のBGMをかけたりすると、僕はこれから死ぬ役になった気がした。しばらく経つと、照明の色にも慣れる。今はもう何も感じない。

 

 

 

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本棚のスピーカー

 本棚にスピーカーが埋まっている。ちょうどいいスピーカー置き場がなかったので、本棚の背板をくり抜いて、そこにスピーカーを置いてみると、僕の好きな感じの聴こえ方になったので、そのまま採用している。本棚に収まっているスピーカーはかわいい。

 

 

 

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パソコンの中の象

 パソコンの中に象がいる。変な物が、変な場所に置いてあることが、僕は好きだと思う。パソコンの中に象がいることで何かが変わるのか? と質問されたことがある。何も変わらない。パソコンの中に象がいるだけだ。しかしながら、象のいないパソコンと、象のいるパソコンと、どちらかを選べと言われたら、僕は象のいるパソコンを選ぶ。

 僕の部屋のチャームポイントは、それくらいのものだ。くたびれたマットレスや、開けるたびに軋む玄関ドアや、うらぶれた入口の階段や、そういうところも気に入っている。でも一番気に入っているのは、ここが今、僕の部屋だということだ。帰る場所があるということだ。