2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

東京の光景

休暇最終日。よく考えると小学校の夏休みは1カ月もあったのに、僕はなぜ何もしなかったのだろう。後悔ではなく単純な疑問が湧いた。それからすぐに答えは出る。何もしなかったのではなく、何をすればいいのかわからなかったのだし、そもそも覚えていないだけ…

足を踏み鳴らす男

休暇2日目。 休むということは、休むということだから、休む時は休むこと、以外のことをしないこと、が肝要であると思われ、では休もう、と、休暇の初日に改めて決めたわけではあるのだが、空白を空白のまま保つことが難しいように、最大・最強の休む=絶対…

エンドロールは夜の国道

休暇一日目。 レンタサイクルで多摩川に行こうと思った。 理由は特にない。なんとなく行こうと思った。 14時に家を出た。帰宅したのが20時だった。 都合6時間、自転車で走り回っていた。家から多摩川へ、多摩川から東京湾まで走った。 東京湾は海だ。 様々な…

休暇に入った。 ぼくはやすむ。

もしも英語を自由に使えたら

もしも英語を自由に使えたら僕は、『ダイハード』の字幕版を字幕なしで見る。ジョン・マクレーンが何を言っているのか僕は知りたい。イピカイエってどういうニュアンスなのか僕は知りたい。字幕版には字幕版の良さがあるにせよ、ブルース・ウィリスの声をそ…

四月

四月は忙しい。人生の様々な局面で出現した人々が、改めて目の前に現れる。交友の狭い人生という自覚はあるにせよ、それでも予定が詰まっていた。明日も人に会うことになる。これはなんという現象なのだろう。人間はある時期に到達すると活性化し、僕はその…

バーチャルに向かって走る/ザ・シンプソンズ

仕事中にぼうっとしていると、先輩がモニタを指さした。 なんだろうと覗き込むとスシローとあくたんのコラボ広告だった。僕はふふふと笑った。コラボするのはずっと前から知っていた。それはつまり喜びの共有であった。面白いことがあるよ。ほう、面白いです…

左耳が聞こえなくなった

一カ月ほど前、電車に乗って帰宅する途中、イヤホンをしたまま爆睡し、知らない駅で目覚めた時から、僕の左耳は聞こえなくなった。 厳密に書くと、聞こえる時と聞こえない時がある状態になった。 聞こえない状態の時は、耳に何かが詰まっているような、たと…

君のために

君に家をあげるよ。と言ったおじさんがいた。この家は君のものになるんだ。と彼は酒臭い声で言った。そんなことには絶対にならないんだろうなと私は思った。家しかあげるものがない人が、家をくれるわけがない。それを人に与えたら、何も残らなくなってしま…

連続する夜の過不足

夜の次には夜が来た。16時間の労働。朝早く会社を出て陽の光を受ける冷え切った体が解凍されていく。 気温は夏に近づいている。明るくて強い光。風は無く、木の影は深い。排気ガスの匂い、疲労の膜が頭からつま先まで覆っている。そんな朝は命が軽い。ふわふ…

あなたはギンガムチェックの人間です

自分の服を他人に選んでもらう遊びをしている。「自分の服を自分で選ぶといつも同じような服になっちゃってつまらないから、僕の代わりに服を選んでくれないですか」 という建前で行っている遊びなのだけれど、本当はただ面白そうだからやっている。 実際に…

観覧車の説教

観覧車に乗った。 最後に観覧車に乗ったのはいつだったろうか。思い出せないくらい昔である。観覧車を見ると、僕はとてもわくわくする。巨大さに心を奪われる。あれに乗りたい、と思う。どんな景色が見られるのだろう? そうして観覧車に乗るわけだけれど、…

残留思念

書かない方がいいに決まっている。こんな状態の時に、こんな状況の時には。亀みたいに頭と手足を縮めてじっとしているのが最適解だと僕は神的に完璧に理解している。一分の隙もなく究極把握している。よって大事なことのみをここにかいつまんで記す。 ・無印…

うつくしい駄文

春で夜勤明けで雨で、だからしとしとと音がしている、路上を走り抜ける子供たちの足音と車のスプラッシュが響き渡る。うつくしい駄文を読んだ。読んだことのない見紛うかたなき完璧な駄文は、積み重ねていく描写のすべてを間違え、名詞を損ね、登場人物は瞬…

隣人の謝罪

隣人の家のドアに貼り紙がしてある。 どうやらメモ用紙を引きちぎったものらしい。 騒音になってしまい本当に申し訳ありません。迷惑をやめてください。 そんな内容の、すこし怪しい日本語の、角ばった文字の、短い文章。 僕はその紙をじっとみつめた。10秒…

神的

意図したわけではないにせよ、神的なるものと宗教的なるもののフィクションをたて続けに読んでしまい、神とは何かということについて考えさせられている。読んだものの神的なるものがキリスト的であったことから、新約聖書への興味も湧いてきた。

屋根裏みたいな部屋

今週のお題「わたしの部屋」 はじめて部屋を訪れた姉は「屋根裏みてぇな部屋だな」と言った。 確かに屋根裏みたいな部屋だった。建物の構造上、壁の一部が斜めになっているし、それほど広くもない空間に生活の道具が詰まっている。その道具は使い込まれてい…

雑草魂

通勤途中、信号待ちで立ち止まり、ふと足元を見ると、ガードレールの足が埋まっている狭い土のスペースから、でかい草が生えていた。 紫色の茎は固く頑丈そうで、根本はちくわくらい太い。まっすぐ伸びて50センチほどの高さのところに黄色い花のつぼみが2、…

余白の休日

めずらしく二連休だった。時間に余裕がある。何をしようか、ずっと考えていた。 スーパー銭湯に行こうと計画を立てた。電車で40分ほどの場所にリーズナブルで広々として、漫画が何千冊も置いてあるというスーパー銭湯があることは、既に調べてあった。きっ…

睡眠

「今日でいいの?」と先輩からメッセージが届く。16時間の労働で僕の頭は思考能力を失っている。体力も気力も底をついている。一度、夜勤明けの体で散歩を試したことがあるけれど、歩きながら意識が飛んだことは強く印象に残っていた。立ち仕事をしていた頃…

飲み会

サプライズで前の先輩が来て忙しかった秋葉原。

ヒーロー

ブルース・ウィリスさんが俳優を引退することになった、とネットニュースで読んだ。 失語症が原因なのだって。67歳なのだってね。まさかこんなことになるなんて、こんなことが起きるだなんてね。人間は寂しい。 スターだったから、お金をたくさん持ってい…

空白

鞄の中に物が入っている。物がぱんぱんに入っていると、他の物を入れることができない。物がぱんぱんに入っている時の鞄は、鞄の機能を部分的に喪失している。 家の中に家具を置いている。家具をぎゅうぎゅうに置くと、人間が暮らすことができない。家具がぎ…

テクノロジー

目を覚ました時、ここがどこで、何月何日で、何時なのか、寝る前に自分が何をしていたのか、何も分からない、喪失した状態で、自分が小学生のような気もしたし、仕事に出るために準備をしなければならない朝のような気もしたし、世界中の機能が停止したばか…

桜吹雪

何かが飛んできて驚いた。 顔を上げると桜の花弁だった。 うつむいて歩いていたので気がつかなかったけれど、強い風に乗って町に桜吹雪。 すげえなあと思った。 大通りを行き交う自動車の列にも、駅からの道を黙々と歩いてくる会社員の列にも、同じように花…

fireHDのインプレッション

電子機器が増えるたびに「めんどうくせえな!」という気持ちと「たのしみだな!」という気持ちと二つ我に在り。 Amazonのタブレットを買った。fireHD10plus64GBエッセンシャル(メモリ4GB)というやつで、現行のAmazonタブレット内ではおそらく一番スペック…

蒸気

激しい蒸気。耳から血が出ている。紙を切り抜いて人型にする。トランスフォーム。形が変わることは考え方を変えることかもしれない。電子煙草を吸っている。蒸気。筒の中で圧力が高まっている。噴出する激しい蒸気は爆発の予感。生きていて命が薄い。今日は…

ウーバーエクソシスト

部屋でゲームをしていると、弟が入ってきた。 それから「姉ちゃん、悪霊に憑りつかれた」と言った。 弟を見ると、たしかに憑りつかれていた。 肌は漂白したみたいに真っ白だし目は血走って真っ赤だし髪は逆立っているし犬歯も少し長いみたいだし30センチく…