うごく水たまり

 IHコンロで鍋を加熱すると電気が弾ける音がした。
 それは怪我したロボコップから出る音と似ていた。
 私は18時の少し前にウインナーを茹でていた。
 ウインナーが小さな稲妻を放っている空想をしていた。

 今日は家を出てどこかへ出かけようと考えていた。
 しかし、結果として何処へも出かけることはなかった。
 めまいがあった。また、まぶたも重かった。思考は林の中の象のように堂々と鈍かった。
 私はブログを始めることにした。

 電子煙草を吸い続けていた。
 全く匂いがしない電子煙草だった。病室で吸ってもバレない、とまで言われている無臭だった。
 たしかに全く匂いはしなかった。
 吸った気もしなかった。

 読書は手につかなかった。
 映画も集中が難しかった。
 聴きたい音楽はなかった。
 私はダンスを踊った。不格好なダンスだった。床がみしっ、みしっ、と不吉に鳴った。
 愉快である。

 茹であがったウインナーの皮はぷりぷりだった。
 そして皮の内側から鮮烈な肉汁がほとばしった。
 シェフを呼んでください。このウインナーはとてもおいしい、と伝えたい。
 インスタントコーヒーにお湯を注いだ。砂糖は入れなかった。
 窓の外は夕焼けのオレンジ色。

 人間の体の60%は水分なのだそうだ。
 うごく水たまりだ。