概念の悪夢

 “仕事で失敗をしたような気がする”という悪夢を見た。
 めちゃくちゃ悪夢で不安で不快だったんだけれど、ぼくは生まれてはじめてこのタイプの悪夢を見た。
 ポイントは「仕事で失敗をした悪夢」ではなく、「仕事で失敗をしたような気がする悪夢」だというところで、これは人間の弱い心を的確にえぐってくる。
 夢の中で自分は仕事で失敗をしたのかどうかが確かめられない状況にあって、作業を思い出して「失敗したような気がするなあ、怒られるかなあ」と延々と苦しんでいる。失敗をしたかどうかが確定しないので、永遠の苦しみが生まれる。
 この悪夢は途中から明晰夢になって、「これは夢だ」と気づくんだけれど、とんでもない強制力によって自分は失敗したかどうかが気になって仕方ない、という気持ちにさせられるというすごい仕様だった。理性とか思考とか論理とか関係なく、強引に気持ちを不安・不快に引きずり込む概念の悪夢は目覚めてからちょっと笑ってしまった。
 
 それにしても、ちょっとメンタルがくたびれているなあと思う。
 金縛りに続いて長く苦しむタイプの悪夢を見始めたらそろそろまずい気がする。
 18時に仕事が終わって、一服して、渋谷でご飯を食べて、帰宅して風呂に入ったらもう寝る時間になっていて、急いでこの文章を書いている。
 余裕がないなあと思う。
 ストレスを解消する余裕もないし、疲れを癒す余裕もない。
 よく社会人って生きているなあと思う。