ハイカカオココア

 あったかい。あまい。いいにおいがする。
 やさしい。砂糖をいれないと、ちょっとにがい。
 うつくしい山にカカオ畑があって、麦わら帽子をかぶったおじさんが実をもいで、風車の小屋で粉にしている。
 ミロはココアだろうか。わからない。ミロもあまい。
 すっと身のひきしまったきりんが、なめていたらいいなと思っている。
 晴天でも、曇天でも、おいしい。給湯室でも、たぶん廃墟でも、おいしい。
 気取っていない。特別でもない。しかし、えもいわれぬ重厚さ。
 うっとり眠くなる。眠ると南の島の夢を見そうな気がする。
 村の外れの漁師の、ひとり娘の金髪のエリカぺカは裸足で帰ってきて、ひとりでココアを作る。
 ココアを飲んでいる人、いい人なんじゃないかって思ってしまう。
 ミルクセーキを飲んでいる人、危険人物なんじゃないかって思ってしまう。
 カップに粉末を入れる時、ぜったいにちょっとこぼれている。
 スプーンで念入りによく混ぜる。香りをたのしみながら。でもぜったいに溶け残っている。
 バブも時々、浴槽の底に残っている。
 つめたくなったココアは、ぎょっとするほど他人行儀だ。
 トイプードルの名前だ。
 アーノルド・シュワルツェネッガーが、小さなカップで飲んでいればいいと思う。
 ずっと紅茶を飲んでいたのだけれど、今年はココアをよく飲む。
 紅茶も飲む。
 
 

今週のお題「買ってよかった2022」