ここ数日のこと

 すっかり秋の空気になってきた。
 部屋がしんみりと冷え、引き締まっている。
 シャワーのお湯が熱く感じるようになってきた。
 布団の柔らかさが増している。
 
 姉と姉の友人とUFOキャッチャーをたくさんした。
 ぼくたちは、いわゆるいい歳の大人なのであるが、おそらく三人で1万円以上使ったと思う。
 そこまでいくと自分たちでさえ呆れてしまう。なぜそんなにお金を使ってしまったんだろう?
 ぬいぐるみやらフィギュアやらを大量に手に入れたけれど、そんなものが欲しかったわけではない。
 ただ楽しみたかっただけなのに、とくにほしくもない勲章ばかりが増える。
 
 元上司から電話がきて4時間通話をした。この人は、どうしてこんなに電話がしたいのだろう。
 直接聞くのはルール違反な気がして聞けない。でも、おそらく寂しかったんだろうなと思う。
 運転中の物音がずっと聞こえている。ひとりで夜のドライブをしていたらしい。
 それなら孤独にドライブを楽しめばよいと思うのだが、彼はぼくとの途切れがちな通話を選んだ。
 ぼくは基本的に会話を盛り上げようと思わないので、ほとんどの時間は沈黙と相槌で過ぎていった。
 ただ、相槌にも疲れてきて、沈黙の方が増えてくると、こんどは元上司の独り言が増えた。
 もう電話をつないでいる意味もなくて笑ってしまった。
 終わり際になると、ただ生活音の交換をしていただけで、まったく会話をしなかった。
 意味のわからない状況に気持ちが悪くなったので、そろそろ寝ますと言って電話を切った。
 
 Aさんと外で酒を飲んだ。
 居酒屋もバーも好きではないんです。本当は。だから外で飲みませんか? とAさんは言った。
 面白いことを考える人だなあと思った。ぼくもそれは何度かやろうと考えたことがあるけれど、酒好きでも外で酒を飲むことを嫌がる人がかなり多いので、まだやったことがなかった。
 Aさんと、書店横の喫煙所で5時間くらい酒を飲んでいた。誰かに怒られるかなと思ったけれど、怒られなかった。秋の虫の声が聞こえていて、空には星も見えて、さわやかな風が吹いた。時々は喫煙者がやってきてぼくたちをちらちらと見た。Aさんは酒の瓶を抱えてうふうふと笑っていた。ぼくは足を組んで眉間を押さえうーんとうなっていた。
 真夜中になると風が冷たくなった。ぼくたちは立ち上がり、帰路についた。
 アウトドア飲み会は、とても静かだった。