事件

 生活のバランスが崩れるような、そういう事件が時々起きて、というよりもぼくが起こしたりして、そのたびに価値観が根底から覆されるような思いをするわけだけれど、第三者的にはよくある普通のことだった、みたいなことがよくある。学ぶたびに、普通の生活を粛々と営み続けることがどれだけ大切かとか、大変かとか、そういうことも考える。変わり映えのしない毎日に揺らぎを与えることは必要だけれど、それは事件である必要がない、みたいな。それでも何歳になっても価値観が何度でも覆されること、人生なんだよなあ。
 ぼくはいつか死ぬ。老いる。病気にもなる。機嫌がいい時も悪い時もある。理性的だったり本能的だったりする。変化し続ける。頭がいい時も、わるい時もある。精神が安定したり、不安定になったりする。固定されていない。そして最も重要なことは、ぼく以外のすべての人間もそうなのだ、ということを実感することだと思う。知っているだけでは足りなくて、あの人もこの人も人間なのだ、ということを実感すること。人間を、人間扱いすること。
 永遠なんてものはない。でもある瞬間には、自覚なく行動が無期限に延長されていることがある。いつかしようと思っていたことがずっと手つかずのままになる。変化を避けられない人間であるぼくは、永遠を今にしようと思った。大切なものは失ってから気づくんだっていう言葉が、ぼくは好きではない。大切なものくらいわかっておいてくれよって思う。その上で、分かってても失ってしまうものだ、大切なものは。永遠なんてものはないから。