なだれ込むように放浪記

 29158歩、徒歩22km。足の皮が擦りむけ始めた。元旦から4日目。昨日までは諸事情あり準・無職だったが本日より真・無職となって、すべての予定はクリアされた。放浪記は通算2日目。衝動的日本縦断の幕が開く。

 大阪→神戸→姫路で一度移動を終え、明日の移動に備えてビジネスホテルにIN。ホテルのコインランドリーで洗濯をしながらこれを書いている。

 明日は鳥取砂丘へ向かう予定だが姫路から鳥取は交通の便が悪い。朝8時の電車で向かうと3時間で到着するが、そのほかの時間帯だと5時間だったり4時間だったり時間が読めない。これは田舎の電車あるあるの1時間に一本しか電車無いダイヤが関係してると思われるが詳しくないので分からない。今日の間に鳥取に行っても良かったが21時鳥取着などになるとホテルがうまく取れない可能性があり怖くて出来なかった。代わりに姫路でそこそこの観光をして体を休めている。

 神戸は港から異人館街周辺を見て回った。噂に違わずおしゃれで穏やかでそこら中に異国情緒が見られ、文化が混ざりあって混沌としつつも洗練されている感じがした町。観光客が多い。港は面白さがよく分からなかった。道ゆくおばちゃんに「あの、すみませんがポートタワーってどこでしょう?」と関西弁で尋ねられた時は妙な気持ちになった。関西弁の人と話した事がないし、ぼくも神戸ははじめてだから場所を知らない。グーグルマップで調べて「ぼくはこの辺の者じゃないんですが、だいたいこのあたりみたいですね」と地図を見せて教えたけれどおばちゃん達がたどり着けたかは不明だった。北野異人館街は非常に面白かった。特に英国館の質実剛健感のあるどっしりしたおしゃれさは素敵で、ホームズの家を再現した部屋もなかなかよいものだった。英国館で一番よかったのは、庭と部屋がとてもさりげなく統一感を保ったままで繋がっているところだった。

f:id:sotokuro:20221005203238j:image

 姫路では駅周辺を見てビジネスホテルを探し出した段階で15時を過ぎており姫路城の閉門が16時だからそれまでに入らなくちゃいけなくてビジネスホテルの夕食が19時で就寝が23時予定で、どこかのタイミングで洗濯をして、コンセントに繋ぐタイプの充電器もどこかで買って、と予定がみっしりになった。姫路城はぎりぎり閉門5分前に滑り込みで入り40分で天守閣を一番上まで上って下りてきた。城は高いところにあるから坂がきついし天守閣は5階くらいあるから階段がきつかったけれど、閉門間際の城は石のように静かで、それは歴史を感じさせるような静かさだった。ぼくは静かな場所が好きだ。

f:id:sotokuro:20221005204444j:image

 ビジネスホテルで温泉に入って無料の夕食というものを食べた。無料の夕食という概念がよく分からなかったのだけれど、夕食代は普通宿泊料に含まれているんじゃないかと思った。食べに行ったら具のない素のカレーと具のない味噌汁がどーんと置いてあり好きなだけ食べなさいという感じだった。なるほどこれを有料とするのはたしかに印象が良くないのかもしれないなと納得しつつもありがたく美味しく頂いた。肉体労働者風の男達がたくさん食堂に押しかけ、炊き出しのような雰囲気になってとてもよかった。食べる時の排他的雰囲気や、おれは何も気にしないぜという技巧的無関心さや、乱暴な手つきや、威嚇風のでかい声や、懐かしい感じだ。人間の動物の感じだ。人間の動物らしい側面だ。それは誰にでもある側面だ。

 ぼくは静かな場所が好きだ。砂漠もしずかならいい。