路上より

 今日は手法を変えてリアルタイム更新をしていく。朝6時から夜22時まで予定があるから、書く時間がないかもしれないし、またブログバグが発生するかもしれないから。

 今日は土下座から始まる。

 完全にぼくが悪いのだがPASMOを使って無人駅で降りてしまったので、PASMOが使える町まで戻って精算してもらう必要がある。つまり出雲市駅である。大体2時間かかる。という内容の質問を朝6時にJR西日本の問い合わせ窓口に電話させて頂いた。非常に丁寧な対応でぼくはJR西日本が少し好きになった。

 そしてワンマン運転って一体なんだ? ということだ。ぼくの故郷にもワンマン運転の電車はあったが、使う駅が無人駅だったことがないので仕組みがよく分かっていない。駅に案内があった。とても助かる。

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 この資料には動線は示してあるけれど、じゃあ切符とか整理券とかはどうするかが書いていない。どうするか? このサイトに詳しく書いてある。とても助かる。

https://www.kasumi-kadoya.co.jp/blog/27846

  出雲市には11:08に到着予定で、朝のJR山陰本線出雲市行きは、1両編成に人がいっぱいだ。世間は3連休だというから、みんな行楽へ向かうのかもしれない。出雲市周辺の安いホテルは早い段階でなくなっていた。今日は出雲市に到着したら素早くお参りをして新山口へ向かう予定だ。眠いし疲れてきた。アジア系の若者四人組が、彼らの言語で歌を歌い始めた。なんか春の小川みたいな、きれいな旋律で。

 松江から都野津へ向かった時、ぼくは出雲市をスルーした。もちろん大社でお参りをしたかったけれど前述の通り宿が残っていなかった。JR西日本の方に電話をして、出雲市に戻ってくださいと言われた時、「呼んでるな、神が」と思った。だから出雲市に戻ったら駅員さんに土下座をして、それから神にスルーしてごめんなさいと土下座をするつもりだ。今日はそういう日だ。そういう日があってもいい。

 はじめて聞く駅名のアナウンスは、全く聞き取れない。「次は、ひぽけけ、です」と人工音声が告げた。「次は、ぶんだー、です」と人工音声が告げた。まったくわからない。アジア系の若者は7人に増え、より騒がしくなった。彼らは歌っているように話した。「次は、いずも、です」と言っただろうか? スマホの乗り換えアプリ上は出雲市だが、アナウンスは聞こえないし電光掲示板は物凄く小さくて見えない。勘で降りるしかない。これが旅か。はらはらしているうちに終点で電車は止まった。終点は出雲市だった。

 駅員さんに事情を話しPASMOは出場取り消ししてもらい精算も済んだ。ようやく重荷が降りた。お手数おかけしました、と告げて出雲市駅前に出る。

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 こちらが電鉄出雲市駅。しょっちゅうJRから私鉄に乗り換えてきたのでだんだん慣れてきたけど、同じような駅名でも違う場所にあることがよくあるので今後も注意が必要だ。出雲大社前までは電鉄出雲市駅から電車で行くか、バスで行くか選べるが、バスはめちゃくちゃ混んでいたので電車を選ぶ。電鉄出雲市駅に行ってみるけど券売機が販売中止の表示になっており、結構な数の人間が待っていた。時間が来ると買えるようになるのか、それとも何か事故が起きているのか、調べてもわからなかったので窓口に聞いたら券売機を起動させてくれた。よく分からないが、券売機で切符買えないようにしていたらしく、ぼくが買ったら待っていたみんなが切符を買いはじめた。日本人の悪いところ出てるなあと思った。ぼくは今日PASMOで失敗しているので、待っているだけだと物凄くとても非常に面倒なことになるのだと学んだのだった。馬鹿らしくても恥ずかしくても面倒でも係の人に聞いちゃった方が早いし、結果的に安心だ。

 待ち時間がまた1時間ほどあるので、頑張って調べ物をしていたら、電鉄出雲市の窓口に「名古屋に行きたいんですけど」というおばあちゃんが来た。わかる、わかるよおばあちゃん、絶対間違うよこんなの、初見殺しばっかりだよ! とぼくは熱くなった。電車が難し過ぎる。

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 電車が来た。またワンマンて書いてある。ということは無人駅もある可能性があるという事なのだ。2両目のドアがボタン押しても開かないことがある、ということなのだ。だんだん学んできた。ワンマンと書いてある時は整理券に気をつけること、そして無人駅に気をつけること、そしてさっさと先頭車両に移動することがビギナーの鉄則だ。無人駅で先頭車両の運賃箱に運賃を入れ忘れると無賃乗車になってしまう。(でも降りる駅が無人駅かどうかなんてどこにも書いてない。みんなどうやってるんだろう?)

 電車は川跡駅の2番線に到着して乗り継ぎだが、3番線に出雲大社前までの電車が来るが、1番線には出雲市行きの電車がすでに待っているので、アナウンスを聞いていない人はたぶん、もう待ってる1番線の出雲行きに乗ったりすると思う。というか半分くらい間違って出雲市に帰ったんじゃないかと思う。ホームで待ってる人が少なすぎる。複雑すぎる。ウルトラクイズの間違った人が消えていくシステムみたいだ。ワンマン電車で乗り継ぎが発生する場合は乗り継いだ電車で運賃を支払うらしい。でも乗り継いだ先の停車駅までの切符を持ってる場合はどうなるんだろう? ルールブックが必要だ。

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 出雲大社前に着いた。色々と時代を考えたデザインになっている駅だけれど、なんというか、ぼくはすぐ拒否反応が出た。出雲大社リア充のばえスポでしかなくなっている。ただのアトラクションだ。金髪で香水臭い声の大きな若者たちが串団子を食べながら遊びに来る場所だ、と思った。実際そうだったので鑑賞時間1時間20分のところを30分でよして神社を出た。とりあえず3回はお参りをしたので神への義理は立てたと思う。成田山新勝寺もそうだし、どこもそうだけど、自社仏閣の前に大量のお土産とか飲食店が軒を連ねている段階で、ああ終わったなって思う。そういうのはもう駅ビルとか特産物店とかでやればいいのではないだろうか、どこにでもそういうのはあるわけだし。少なくともぼくは価値を感じないので入らないし、神社自体も特にいいとは思わなかった。完全に観光地化されていて拝金主義的で、別にそれでもいいんだけど一番耐えられないのはそういう場所に人間のストレスが集まってくることだ。馬鹿みたいに長い渋滞、駄々をこねる子供達、親の悲しそうな疲れた顔、馬鹿笑いする大学生の集団、つまらないという感情を隠そうともしない彼氏の八つ当たり、横入りしたのされたのとぶつぶついう声、そんなのでいっぱいだ。なんも面白くない。ぼくは人間が作ったもの、人間の観光地と相性が良くないのではないか、と思った。人間が作ったもの、人間の観光地には人間がたくさん寄ってくるのであまり好きではなくて、でも人間が作ったものが滅びゆく感じは好きだ。そこには神が宿っているように見える。この神社より。

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 ホテルに土下座した。15時チェックイン予定で予約してあったが、22時チェックイン予定になったからだ。快諾して頂いた。22時て、ほぼホテルにいない。

 出雲市にとんぼ返りして、飲み物を買おうとコンビニを探していたら、駐輪場のおじさんがコンビニへの近道を教えてくれた。なんて優しさだ。ぼくは人間が好きになった。そのあとコンビニで支払いをしたら自動精算機が詰まった。コンビニの店長が慣れない手つきで直してくれた。ぼくは人間が好きになりかけたが、小銭がうまく排出されなかったようで「633円払ってもらっていいですか?」と横柄に言われ「細かいのがないんですけど」と言ったら「いや大きいのでいいんで」となぜかキレ気味に言われ、小銭が詰まって633円て言われたらジャストで出さなきゃダメなのかなと思っても不思議はないと思うんだけどなんでお前がキレんねんカスが、という気持ちになった。だんだんやさぐれてきた。旅をしているという気持ちもほとんどない。生活だ。完全に旅が生活になった。

 駅に戻って切符を買おうとしていると、ママー特急乗るの? そう、15:04のね。という親子の会話が聞こえてきて、ふと電光掲示板に目をやると15:04 新山口行きの電車がある。路線はアプリでさんざん調べたけれどその時間の特急はなかったはずだ。何かおかしいぞと思い乗り換えアプリの設定を見直すと有料特急が検索から除外されている。いつかぼくが外したのだろう。でもこの特急でいけば22時ではなく19時ごろに新山口に着けそうだった。15:04まであと10分ほどしかなく、本当に間違いがないか、コストにパフォーマンスが見合っているか、残金はいくらあるか、ホテルへの連絡がまた必要になるが大丈夫か等の懸念事項を精査するため脳をフル回転させ、結局は親子による啓示が行われた通り特急に飛び乗った。ギリギリだった。神への祈りが、早速身を結んでいる。

 ホテルへ3度目の土下座をした。19時に新山口に着くことができる。少しは休めそうだった。ホテルに着いても明日の宿と路線を考えているうちに終わっていくのだけども。少なくとも今日は心理的な負荷はあまりない。昨日はPASMOのために疲れていた。

 JR山口線新山口を目指している。またいつもの谷川田園である。この眺めを見ていて、本当に日本てほとんどがこういう土地なんだなと思う。主要都市が海に面した平地で、それが目につきやすいだけで、大半の日本というのはほとんどが谷川田園であるか、または山と海の狭間の漁村であるか、なんだよな。改めて実感した。青森から新山口に至るまで、やはり驚くほど似通った景色が続いている。

 新山口着、ホテルチェックイン。今までで一番サービスが良いホテル。価格もお安い。部屋もおしゃれで部屋着が黒のつやつやした半袖と長ズボンで動きやすい。ランドリー無料。朝食無料。テレビ大きい。駅から近い。カミソリと歯ブラシがいつもの白いの(大概のホテルが同じ歯ブラシとカミソリ。あの白いの)ではなく作りが良いもの。コンビニも近い。ビジネスホテルのジャンルでは全てにおいて高品質で星5です。お客様もかなり入っている様子。夕食を食べに行く元気がなかったのでコンビニでおにぎりなどを買う。ランドリーで洗い物をしつつ風呂に入って明日の予定を立てる。そろそろ旅も終わりにしようかと思っている。なんとなく日本の解像度が上がってきたし、長い旅がどんなものかも分かってきたし、みたいものも少なくなってきた。長くてあと2、3日だろうと思う。

 生活=旅に追われている。次のホテルを探し、次に見たい場所を探し、歩き、長時間電車に乗り、楽しいけれど、今本当に自分がやりたいことは何かと自らに問うと「森の中の洋館で一週間くらい本を読んで過ごす」だった。つまりそれは気持ち的に旅の終わりを意味しているように思った。でもまあ、俺達の冒険はまだ始まったばかりだ。