ふるさと

 14時間くらいゲームを続けていて、そうすると徹夜になって眠らないんだけれど、時間が経つのがとても早くて、朝になったかと思うともう夜になっていて、首、膝、尻、手首が痛くて、目があまり開かなくて、意識ははっきりしているけれど思考能力は下がっていて、何も食べていないことに気がついてカロリーメイトを食べながら、ゲーム以外のことはせず、ゲーム以外のことは考えない、そういう一日が子供の頃からのぼくの理想で、何かを得たいとか、何かになりたいとか、どこに行きたいとかなくて、誰にも影響を与えず、誰の為にもならない、人としての機能を喪失している、単純な目的のためのエンジンみたいな、そういう概念が好きで、だからぼくが今、社会からスピンオフしていることは道理で、孤独でさえなく、自分が何なのかとか、世の中が何なのかとか、言葉がただの音になり、感情は遠く、燃料を吸い上げ燃焼するだけのものになっている時、とても生きている。
 音楽のライブとか、コース料理とか、高い服とか、アイドルとか、旅行とか、いろいろな経験をしてみたけれど、ぼくが一番生きていると実感するのは、完全なのは、充ちているのは、真っ暗な部屋で人として死んだようにゲームをしている時だ。
 何をしていてもここに還ってくる。
 暗い部屋と、ちかちか光るモニターのある場所が、ぼくの故郷。