うそつき

 まだ息をして星を眺めたりしている。

 嘘をつかない方がいいよ、1を0にすることはできないかもしれないけど、優しさからのうそでも、ウソをつかせてしまったという事実で傷つく人が、どこかにはいるのかも知らないのだから。と、言われた。ぼくはうなずいた。それから(この人になんか嘘ついたかな……)とずっと考えていた。

 考えた結果、無限に嘘をついていた。

 食べたくないものを食べたいと言ったり、聞きたくない話を聞いたり、借りたくないものを借りたりした。なるほど、ぼくは嘘つきだ。

 ほんっとに損する性格だね、と目の前の人間は言った。オーケー、認めよう。ぼくは損する人間だ。息をするように損する人間だ。

 人のことを考えてあげたって意味ないよ、自分が得するように動かなきゃ、と目の前の人間が言う。ああ返す言葉もない。耳が痛いよ。あなたの言う通りだ。全部そのまま真実だ。

 そのようなぼくだから、一言だけ言いたい。

「あなたもずいぶん損してきたんですね」

 そんな言葉は言わないけれど。