ビスケットを食べると寝てしまうの

 教習所でバイクに乗った。
 NC750L。印象に残らないので、いつも名前を忘れる。
 バイク名前っていうと大体RとかSとかXとかZとか、そういう文字が入っている。
 なんか速そう、みたいな。なんか強そう、みたいな。そういう文字。
 シンプルセンスで、すこし面白い。
 レンタルバイクを経てNCに乗ってみると、やはり大柄でパワーがもりもりしている印象だけれど、それ以上に感じたのは、シフトチェンジがものすごくやりやすいということ。
 適当にギアチェンジしても、すぽっ、とハマる。
 ギアを下げてもエンブレが効きすぎてぶおーーんとなることがない。
 すごく上質なギアの感じで楽しい。
 ベネリTNT125などはほとんどおもちゃの感覚で、かちゃかちゃしてるし、あまりに軽すぎてギアが入っているのかわからないこともあるし、実際にギアが入っていないこともあるし、1速に入ったすぐあとにニュートラルに戻ってしまうとか、ギアチェンジ直後にアクセルを当てるとエンジンから変な音がするとか、壊れているのかと思うほどのチープさだった。
 教習の中で、CB400に乗せてもらう機会があった。
 久々に乗るCBは、最初とはまったく印象が違っていた。
 NCのあとに乗るCB400はとても小柄で、ハンドル周りがずっしりと重い。接地感がある、という感じもするし、ハンドルのスチール感が重い、という感じもする。アクセルを開けると過敏に反応して甲高い音を発しながらあっという間に5000回転ほどまで吹ける。このバイクは教習車に向いていないんじゃないかと今更思う。パワーがありすぎる。GB350でいいと思う。
 NCは新車だけれど、CBは教習生が使い込んでいる完全な中古なので、ハンドルが曲がっているような感じがした。たぶん曲がっていたと思う。そういうのも、今になってやっと分かること。色々なバイクに乗ってみて、ぼくも少しわかってきたのだと思う。バイクとはどういうものなのかが。
 なんにせよバイクに乗るのは楽しかった。
 教習所には遊びに行っている。
 
 ジブリの新作『君たちはどう生きるか』を観てきた。
 とても面白い映画だった。アニメーションが凄まじいなあと思う。金のかかり方が違う。つまり作画的なことなんだけれど、作画というとよく「ぬるぬる動く」という表現が使われるけれど、ぬるぬる動くのはもはや当たり前で、何を表現したいのか、が分かるように描かれている、というのも作画だし、そもそもキャラクターの動き、芝居のさせ方のセンスだって作画であり、そういう部分のこだわりというか動きの面白さとか見せ方を表現する技術が素晴らしかったなと思う。ぼくはそういう意味でもtrigger作品が好きだけれど、triggerとはまた違った凄味がジブリにはある。当たり前だけれど。シナリオについては言及できないけれど、宮崎さんの狂気がよく表れてよかったなあと思う。ただちょっと可愛さで媚びすぎているのでは……? という箇所があり、そこは少し鼻についた。ぼくは割とナウシカもののけ的な硬派さを期待していたのだけれど、もっと曖昧で、意図的にコラージュしたような内容だったかなと思う。意味とか、感動とか、シナリオ重視ではなく、作画=アニメーションの面白さにフォーカスした作品だったんじゃないかと勝手に思っている。アニメの短編はそういう作風が結構多いけれど、それを映画の尺でやっているような感じ。
 なににせよ、ジブリの女性ってみんなめちゃくちゃ強い。精神的にも肉体的にも、男性性をまとっている。そして男性の青年はみんな凛としていてかっこいい、みたいな描かれ方をする。宮崎さんのキャラクターの、この凛とした感じのモデルはなんなんだろうなあって、ちょっと思った。
 映画には関係がないけれど、ジブリというファミリー層に向けたアニメだったせいか、映画館のお客の質がとんでも低かったことはここに明記しておきたい。上映中にずっとビニール袋をがさがささせ続ける人(どうして上映前に物を出しておかないのか?)、上映中にいびきをかいて寝る人(寝てもいいけどいびきをかいたら近くの人が起こしてあげよう。うるさいので)、上映中におならをする人(本当にいて、ぼくはドン引きした。初めてだよ、映画の途中で思いっきり屁をこいたやつは)、隣の席の人とずっと小声で笑いあっている人(映画の最初におしゃべりはやめましょうって注意が出ていたでしょ?)など、とにかくマナー違反者が多数おられた。ぼくは映画鑑賞のルールに関してはとてつもなく繊細なので、ちゃんとしてほしいなあと思った。とくにビニール大好きの奴がぼくは大嫌いで、延々とがさがささせ続ける人がいると、席を立って言いに行く。そこはもう人見知りも対人恐怖も関係ない。ぼくが異常者となってもいい。ビニール大好き人間を駆逐させられたらぼくはもう映画館を出禁になってもいい。
 
 排水口を掃除した。
 気持ちがよい。
 
 近所にオリジン弁当が出来たので行ってみた。
 とてもよそよそしい弁当屋で、キッチンの女性たちも暇そうにテーブルを突いたりしていた。
 ぼくはセルフレジのやり方がよくわからなくておろおろしていたけれど、誰もぼくに声をかけたりしなかった。
 気に入った。
 また行こうと思う。