うんと太った

 ほぼ毎日、ラーメンの大盛を食べている。正確に書くと、会社に出る日は毎回ラーメンの大盛を食べている。なぜ、食べるのか。おいしいからだ。ぼくは食べ物にはあまり興味のある方ではないが、ラーメンと乾いた肉には目が無い。どうして、ラーメンが好きなのか。母がラーメン人間だったからだ。母はぼくが幼少の折、なにかとラーメンを与えた。普段はインスタントラーメンを与え、出かければラーメン屋に連れて行った。ぼくは勿論、幼少の折より食に興味がない方で、お菓子ならアリより食らうが、ご飯となると妙に少食な質であった。そんなぼくが、ラーメンならどうやら食うらしいと分かったので、母はぼくにラーメンを与え続けたのであろう。それほどまでにラーメンを食わされてきたのなら、むしろラーメンを嫌いになることさえあるのではないか、と思われるが、あの頃からずっとラーメンは好きなままだ。ラーメンはぼくのソウルフードとなったのだ。ぼくは文字通り、毎日ラーメンを食べ続け、飽きず、飽きる気配さえ見当たらず、ラーメン屋に通い続けている。店員の中国人のおばちゃんは、すっかりぼくの顔を覚え、いつもありがとうございます! と言うようになってしまった。いつもありがとうは、こちらのセリフだ。おいしいラーメンをいつもありがとう。しかしたまに、大盛を頼んでるのに普通盛りで出してくること、ぼくは気づいているよ。注意したまえ。ぼくは親譲りのラーメン人間だ。小さな変化でさえ敏感に読み取る。ぼくはラーメンに景色を見る者。ぼくはラーメンに人間性を見る者。ぼくはラーメンで会話する者。ぼくはラーメン人間。

 毎日ラーメンを食べていたら、だんだん太ってきたような気がする。というか、太った。今までするする履けていたズボンが、ぱんぱんになってきて、太ももの辺りがパーンッとしてきた。まるで競輪選手のようだ。これは、よくないことです。ラーメンが悪いわけではないです。これは、すべてぼくが悪いのだ。ただ怠惰なぼくのみが背負うべき罪なのだ。だから、ラーメンを食べるのやめれば? という至極もっとも風の事を言ってくる連中には、ぼくは耳を貸さない。ラーメンは悪くないということを、もっとたくさんの人間が知るべきだ。悪いのは人間であり、ラーメンではない。よって、ハンバーガーもコーラもポテチも冤罪である。悪いのはすべて人間だ。まず罪を認める事、それが更生の第一歩である。弱い自分をしっかりと見つめてあげること、それが良き人間たる者にとって肝要である。

 お昼に醤油肉つけ麺大盛を食べ、帰宅してからとてもお腹が減ったので、Uberでダブチセットとビッグマックセットを頼んで全て平らげた。人生で一番食べている気がしている。