カード、紳士です

 友達の家でゲームをしよう、という小学生のような企画を立てたぼくたちは、Aの家に集まって、コンビニで買ったアイスや揚げ物スナックやジュースなどを食べ飲み食べしながら、YouTubeなどを見たりして、いかにもカウチポテトなごろごろ休日をジョイしておったのだが、真深夜になって友人が「最近、私はカードゲームをしています」と言った。

 カードゲームというものをぼくは食わず嫌いして生きてきて(小3の頃、ポケモンカードをちょっとだけ集めていたが)、というのもカードを集めるのが面倒くさそうだし、そもそもルールもなんだか面倒くさそうだし、というかカードゲームする仲間もいないし、といった理由があったわけだが、それでも根が素直なぼくなので、それならば是非、カードゲームを教えてください、と頭を垂れ教えを請うたわけだが、このカードゲーム、つまりワンピースカードが、とても面白いもので、ルールを覚えてプレイできるようになると非常に知的であり、かつコレクション要素もあり、運の要素もあるという、様々な楽しみがあることが触知され、ティーチングしてくれたAの手腕もあるだろうけれど、ぼくには大変、魅力的で、紳士な遊びに見えた。そう、紳士。最近、ぼくには紳士要素が足りなかった。Aとぼくは、カードを挟んで静かにバトルを楽しんだのだ。どっちが勝ってもいいし、怒鳴りあったり、激しく運動したり、ということから遠く離れている世界。そもそもカードゲームってやつぁ紳士が遊んでも良いものじゃないか、テーブルクロス、キャンドル、シルクハットでポーカーしても似合う。逆にメキシコの雑貨屋のポーチで荒くれ者がポーカーしていても似合う。カードゲームというのは、なんというのか、静かなコミュニケーションの文化、つまりジェントルマン……とぼくは思い、嬉しくなった。

 Aはぼくにスターターパックを買ってくれた。500円くらいのやつだけれど、その500円でとりあえずゲームに必要なカードは全て揃うというものだ。ぼくは楽しくなった。初期費用の安さは子供向けだけれど、でもきっと子供だって、はじめて自分のデッキを持った時、とても楽しい気持ちになるんだと思う。ぼくは自分のデッキのことを考える。戦略を考える。好きなキャラクターのことを考える。どうすれば勝てるか考える。その全てが楽しい、ひとつの愛である。誰かに勝つとか、良いカードを引き当てるとか、そういう事だけがカードではない。ぼくのデッキというものがある、ただそれだけで、ぼくはとても大きなものに参加している。