有意義

 自分で裾上げしたずぼんを初めて洗った。
 ほどけて分解するのではないかと心配した。
 そうはならなかった。
 糸を侮っていた。
 何も考えていなかった。
 糸が無ければ、人間は今も獣の革を体に巻いている。
 人間の生み出した最も重要な素材かもしれない。
 
 お昼休みは開放的な殺伐。
 いつもならどこかへ食べに行く時間だった。
 今日は書店に行こうと考えた。
 目的地の書店は工事中で閉店していた。
 もう一軒の書店に向かっている間に、会社へ戻らなくてはならなくなった。
 休憩の1時間、ずっと町の中を歩き続けていた。
 またやろうと思った。
 
 いらない服はいつもキモい。
 ただであげると言われても、欲しくない。
 誰だってそうなんじゃないかと思う。
 かつて自分の皮膚だったもの。
 垢を惜しむ人間がいるだろうか。
 
 読書用の椅子は見晴らしがいい。
 でもすこし、本が他人みたいだった。