23日の私へ

 お元気ですよね。知ってます。
 手紙の最初にお元気ですか、と書きたくなるのは、元気が一番だと思っているからです。
 世界の誰よりも、私は私の健康を祈っています。たぶん、今は。どうだろう。きっと。
 案外、自分の元気なんてみんな考えていないような気もしますね。姉も母も、なんにも考えていないんだろうな。あの人たちの刹那的なパンク精神を、私は好きですけどね。家族だし。
 今、何してますか。たぶんバスか、電車に乗っている頃でしょうか。
 行き先は静岡だと思うんですけど、違うのかな。何も分かっていないのに待ち合わせに向かうのって、わくわくしますよね。私が好きですから、私も好きでしょう。
 わけのわからないことをしながら、きちんと周りを見て、わけのわからないところへ運ばれて行きましょう。
 私はそれが出来る人です。知ってます。
 特に心配はしていません。今日、お財布に10万円入れたのは私ですから、それだけあればどこへでも行けます。
 何か不測の事態が起きて東京に戻らなくちゃならないとしても、まあ問題はないでしょう。
 嫌なことがあったら帰ってきてもいいんですよ。いつだってひとりで帰ってきてください。ひとりでもっと遠くへ行ったっていいんです。人間って自由らしいですよ。時々、それを忘れてしまいますけど。でもまあ、忘れてしまって、いつもみたいに人の顔色をうかがって、空気を読んでなんとか盛り上げようとして体を張ったりする私のことを、私は結構好きです。最近はそんなこともしないのかな。より自分らしさの中に閉じこもって保守的になっている気もするな。昔は真っ暗な海に飛び込んだりしましたね。なつかしいですね。自分を痛めつけようとしなければ大丈夫です。
 BさんもKさんも親切な面白い人たちですね。ちゃんと話せているかな。話せてなくてもいいです。楽しめているかな。楽しめなくてもいいです。なんでもいいので、よく見ておいてね。よく見ておきなさい。いつもそうしてきたみたいに。失礼のないように、それだけは意識しておいてください。彼らは私に害を為そうとしているわけではありません。味方です。今まで、たくさんよいことをしてくれたでしょう。恩知らずにはならないようにね。それはいつか自分を苦しめるって、私は知っています。もし人間関係で不快なことがあったら、そうだな、その時にはひとりで京都にでも行きなよ。それでいいと私は思います。
 私は今、結構たのしみです。私が何を見ているか、そのことが楽しみです。
 帰ってきたら、何が起きたのか、これを書いている私に教えてください。
 それでは、よい旅を。