体の移動、心の移動

移動するためだけに、移動したいことがある。 どこかへ行きたい、と願う。 しかし、具体的な目的地について考えると、特に行きたい場所はない。 ネットを駆使し、グーグル・マップを見渡し、2時間かけて目的地を探してみる。 ない。 行きたい場所は、結局な…

ファーストテイクであのちゃんの嫌そうな顔に泣いた

ファーストテイクをyoutubeで見た。 最初はすいちゃんのステラ―ステラ―を見て、やっぱりすごく歌がうまいなあと思った。 音楽としてのミックスというよりも、歌が真ん中にどんと据えてあるミックスだから、歌のうまさが際立つ。 それからあのちゃんの『普遍…

私たちはTOKYOで揺れる

ドレッドヘアの若者がゆうらり歩み寄り優先席に落下するように座った瞬間、弾みで頭がバウンドしてそのままうなだれ、ドンッと私のケツに後ろのケツが体当たりをかます。いっぺんに色々なことが起きたので私は5秒ほど仮死状態になった。なんだこの電車は、変…

らくらく人生超解決!クズ入門

こころの勉強をしてきて、極端な解を、ひとつみつけました。 もちろん、すこしばかり含み笑いの解答ですが。 人生が生きやすくなるキーワードは、クズです。 うつになりやすい人、疲れやすい人、傷つきやすい人、怒りやすい人。 そういう人たちには、共通の…

バレンタイン・イヴと人間の心

ふつふつと湧き上がってきた。 電話機のボタンを押す。 ぱちぱちぱち! ぱちぱちぱちぱち! ぱちぱちぱちぱち! 誰も、電話に出ない。 想像――非常灯の灯る暗緑色のオフィスに、響き渡るコール。 受話器を置く。 がちょ! 腕を組む。首をごきごき鳴らす。椅子…

海に行こうよ

「海に行こうよ」と、僕は言った。 矢部はうつむいた。 矢部はいつもうつむいていた。「うちのすぐ近くにあるから、シャワーとかはうちで浴びればいいしさ、楽しいよ」「でも俺、海とか行ったことないから」 矢部は背が低かった。時々ものすごく面白いことを…

文章温泉低速の湯

2024年のはじめ、30分で書けるだけ、と決めた。 時間内に出来るだけたくさんの文字を書くルールだった。 文章がまとまらず、何時間もかけて悩んでしまう日もあったけれど、大体30分で書いてきた。 現在の私は、30分で1000~1400字ほどの、日本語として意味の…

心の拠り所

心の拠り所という言葉が本の中に出てきて、心臓を握りつぶされた感じになり、吐血し、小刻みに震えながら自らの体を抱き、狭い部屋の中をぐるぐる歩き回っていると、そのうち「何を怯えているんだ」と声がして、それは勿論オルター・エゴで、「去れ! 去れ!…

勉強

私は勉強が好きです。 でも、学校は大嫌いでした。「勉強しろ」と言われてうれしくなるような人は、おそらくいないでしょう。 学校は勉強は強要します。 あ、教養を強要します。 大人たちが事あるごとに勉強しろと言う気持ちが、大人になった私にはわかりま…

図書館

休日には、健康のために一時間ほどぶらぶら歩くことにしています。 特にどこへ行きたいわけでもないのですが、音楽やラジオを聴きながら何も考えずに歩くことは愉快です。 さまざまなものが目に映ります。 木から木へ飛び回る小鳥や、犬と歩くヒトや、川を泳…

プラダを着た悪魔を観た

面白かった。この映画は生涯で4回ほど観た。 4回とも面白かった。 プラダを着た悪魔という映画はファッション業界の話だ。 ジャーナリスト志望の若い女性がとても有名で強大な権力を持っているファッション雑誌の一番偉い人のアシスタントになる。 若い女性…

理想

理想という言葉がある。 私にも理想がある。 理想は旅人です。 私は旅がすこし好きだ。でもすごく好きだというわけではない。だから理想が旅人ですって変かもしれない。 変ですね。おほほ。 しかしながら、理想というものはそういう風に、たぶん今の私とは違…

選択について考えすぎる

制限をかけたい。ウームムム、ウーム。 可能性を押し広げることが人生を豊かにするという言葉を短絡的に鵜呑みにし過ぎたのかもしれない、と自戒しました。 その*可能性*は幻想だし、その*人生を豊かにする*もまた幻想でしかないんじゃないかなと、考え…

スパイダーマンのような

スパイダーマンのような人がいたよ。 スーパー・マーケットの駐車場入り口の真ん中に立っていたよ。 まだ雪が降っていた。その時には小さな欠片になっていた。小鳥の胸毛のような小さな雪が、はっきりと目に見えるのに、認識が難しい速度で落下していたよ。…

休憩神

今週のお題「元気を出す方法」 元気を出す方法について考えるためには、まず2つの前提が必要です。1,元気がない状態を把握すること2,元気な状態を把握すること このどちらが欠けても「元気になる」ことは出来ません。 元気になるという現象は前提1から…

私の知らない世界

私の知らないことを他人が知っていると、私はまるで無知であることを思い知らされるわけだけれど、その経験は私にとって大事だし、私は、他人が知らないことを知っている、ということを知ることも、同じように大事なことで、我々は他人である、ということの…

フタホシテントウ殺虫事件

ミステリーだ。 フタホシテントウの死骸が部屋の真ん中に忽然と姿を現した。「うそ……うそよだって……そんなはずないッ!!」と私は思った。 2月1日、フタホシテントウは天井の隅にくっついていた。ちょうどPCの真上にあたる位置だ。くっついたままもう何日も…

そういう本

「外黒さん、今日はこれからどうするんですか」「家に帰って、風呂に入って、本読んで寝るだけだよ」「ああ、どんな本読んでるんですか」「アーシュラ・K・ル=グウィンのいまファンタジーにできること」「え?」「アーシュラ・K・ル=グウィンの、いまファ…

見知らぬチーム

駅を歩いていると、電車を降りた群衆が大挙して押し寄せる。 すごい数。ひとりひとりの顔を認識することさえ困難だ。 私は群衆を避けホームの反対方面まで移動しようとする。 その時、右斜め後方から誰かが一歩前に進む。 ベージュのコートを着た長い髪の女…

もう読み返さない

過去の自分の書いたものの何がそんなに私を苦しめるのか。 本当はそんなに苦しくないんじゃないか。「昔の文章を読むと吐き気がする」という思い込みがフィジカルに作用するほど強く無意識の領域にまで刻み込まれているだけではないのか。 そのような仮説を…

読み返さない

春樹さんの本をぱらぱらと読んでいると、“自己治癒的” という言葉がちらほらと目につき、創作には自己治癒的な側面が確実にありますものね、という文脈であり、そのような論旨を、発行年が10年以上違うAの本とBの本の二冊で実施されておられたので、たぶん…

とてもはやいさようなら

退職予定のIさんと酒を飲んだ。 どういう気持ちだったのか聞きたかった。 Iさんは話してくれた。 さすが北国の人だ。 ある意味ではそこに住む人たちはみんなパンクスだった。 すぐ死ぬからだ。 魂がぶつかる瞬間以外のどんな時間にも興味がない。 たぶん私た…

中年の危機をうだうだする

20代の後半あたりから、ずっと中年の危機だったのだが、今も中年の危機で、これがさとり世代の空気かもしれないなあ等、考えながら、ネットで正しいさとり世代の定義を調べているうちに、つくし世代という言葉もみつかり、自分を犠牲にして他人に尽くす世代…

もう一度カオス

こうなってしまうと、その日はまず自己紹介から始まる。 仕方のないことだと思う。 はじめまして。私はうごく水たまりです。よろしくお願いいたします。 私は混乱している。また興奮してもいる。こんがらがっている。 縫物をしていると時々、何かの偶然で糸…

かなびばほに

昨晩、金縛りになった。 久しぶりだった。 20代前半のある時期、妙に金縛りの回数が多いことがあったけれど、あの頃以来かもしれない。 私の金縛りは遺伝ではなく、ユニークな特性だ。 姉は一度も金縛りになったことがないので、私を羨ましがっている。 羨ま…

歌詞

歌を聴いている。 歌には大抵、歌詞がついている。 歌詞がついているから歌だと言えるのかもしれない。“ピーパッパッパラッポ”は、歌詞なのだろうか。 よくわからないけれど、それもたぶん歌詞なのだろうと思う。 なぜなら私はその歌を聴くとき“ピーパッパッ…

眠気チャンス

今日は本当に何を書いても全然気に入らない日だった。 2時間ほど頑張ったけれど駄目だった。 結局のところ、私は頑張るのに向いていない。 それから2日ほど寝ていない。 そう私は悪くない眠れないのが悪いんだ、ということにした方が精神衛生上よい事に気が…

ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン

時々、わけもなくヴァイオレット・エヴァ―ガーデンが見たくなる。 見ると私は泣く。 泣いている時の私は、とても醜い。 よい歳をこかれた男性が、アニメを見て、不意に涙を溢れさせる。 涙が一筋、頬を伝って美しく流れるわけだ。 一筋の涙は美しいかもしれ…

きたない靴を捨てる

靴がこわれている。 その白い靴はNikeの有名なバスケットシューズで、町に出ると必ず3人くらいは履いている人がいる。珍しいものではないし、いつでも手に入る。 私はその靴のふかふかした履き心地や、ぼんっと鈍臭いシルエットがなんだか好きで、よく履いて…

偽カラス

喫煙所は会社の外にある。 エレベーターを下り、自動ドアをひとつくぐり、水の出ない噴水の脇を少し行くと、真っ黒な巨大な羊羹があるから、その裏に回り込んだところ。表通りからは見えない場所。 灌木に囲まれた寒々しい広場に、灰皿が4つ立っている。 ど…